2012年5月8日火曜日

2012年のGET LOUD〜山本志歩×長澤成啓〜



それぞれ2人のフロントマンを擁するwearerとFURAGO。
その編成の中で「第三の男」として着実にバンド・サウンドを支えているギタリストが山本志歩(wearer)と長澤成啓(FURAGO)だ。
自己主張が強いギタリストたちの中で、飛び抜けて謙虚な2人。
その2人にとって、バンドとは、お互いのプレイとは、そしてギターとは。


例えば、wearerはツイン・ヴォーカルでメロディが前に出る音楽をやってる。FURAGOだったら、シンセサイザーの鳴りが印象的なダンス・サウンド。そういう音楽をやる中で、ギタリストとして気をつけてることってあります?

長澤成啓(以下N):なんだろうね…場面場面でシンセなりギターなりが前に出てくる場所があるので、まずそれを踏まえるってことですよね。大体FURAGOはシンセが前に出てくることが多いので、フレーズだったり、フワーっとうわものが鳴っているところに、下からギターをのせるって感じですよね。
山本志歩(以下Y):やっぱりwearerで一番大事なのは歌で。その辺はげーしー君(長澤)と似てると思うんだけど。リード・ギタリストって感じじゃなくて、バッキングで全体の雰囲気を司る担当なのかなって。 



ふたりとも、テクニックも経験もあって、もっと前に出てこられるはずなのに、それをしないっていうところは共通してるよね。

Y:それは性格もあるだろうけどね(笑)。
N:それはあるね(笑)。

2人はそういう前に出てこないタイプの人間なのに、ギターを選んだっていうことが不思議だよね。

Y:触ったときに一番楽しかったんだよ、ギターが。学校にいればさ、リコーダーでも鍵盤ハーモニカでも、あるから触るじゃない?音楽に興味なくてもさ。そうやって触ったとき、ギターが一番楽しかった。
N:僕、一番最初はベースをやりたいと思ってたんだよね。でもバンドやるあてがないからとりあえず家でひとりで練習すること考えたとき、ベースじゃ練習にならないなと思ってギターを買ったのね。そこがはじまりかな。
Y:ちゃんと先のこと考えて、目的があって、ギターを選んだんだね。
N:そうだね。家で練習するならギターがいいなと思って。
Y:俺、何にも考えてなかったからさ。「おお、いいね!」っていう(笑)

はじまりからして対照的だね、2人は。
お互いのプレイ・スタイルについてはどう?

N:すごくリンクするっていうか、近い部分はあると思う。フレーズが似ているとかはないんだけど、音作りにしろ方法論にしろ、こういう感じでくるんだろうな、っていうが結構わかるっていうか。
Y:自分に絶対的に課せられている役割があるとすれば、印象的なメロディを弾くことなのかなって。歌メロとは別のサブ・メロディを見つけるっていうのが俺の仕事。音数とかテクニックとかは要求されてないんだけど、とにかく「いい感じ」のものを「見つける」。それが俺のスタイルなのかなって。そういう意味では共通する部分はあるよね。でもFURAGOの方が音数多いし、大変そうだけどね。
N:wearerは歌ありきの音楽で。ギターも歌メロの延長っていう部分が少なからずあると思うんだけど。FURAGOは、器楽的な要素を要求されるので。ファジーな部分がないんだよ。「こういう音で」とか「こういうフレーズ」でっていうのが明確な注文としてくるんだよね。
Y:FURAGOのギター・フレーズは、完成度が高い感じがするよね。
N:それは僕自身の能力というよりか、バンド全体のアレンジの要求に応じた結果というか。FURAGOの音として「この部分を担当してくれ」っていうのがすごく明確だから。最初は戸惑ったけど、最近になって、その要求に自分のスタイルをうまく混ぜられるようになってきたかな。

お互いのエフェクターを見て、印象はどう?

Y:がっちり組んであるように見えて、2人とも結構中身は変えてるよね。
N:意外と流動的だし、ルーズだね。
Y:一通りあるなーって感じだよね。歪みと空間系とモジュール。
N:でもやっぱり、方法論的に似ているなって感じるよね。Nova Delay(TC Electronic製。いわゆる空間系のエフェクター)とかはおんなじだし。

中でもこれは肝だってエフェクターはどれなの?

N:やっぱりNova Delayかなあ、これがないと「canti iikura」とかは弾けないので。これ何がすごいかって、数値でテンポを設定できるから、同期を使ってないうちみたいなバンドには必須なんだよね。うちはテンポありきで、曲を決めていくから。ライヴの時には、このディレイのテンポに、スミタ(FURAGOのドラマー)にあわせてもらう。
Y:wearerもそう。これがないとできない曲あるよ。

アンプについてはどう?

N:フェンダー(のツイン・リバーヴ)があれば、それを使うことにしてるかな。マーシャルだと手元のニュアンスが出ないんだよね。
Y:エレキ・ギターに関しては、アンプも含めてひとつの楽器だからね。「アンプ7割、ギター3割」とかっていうんだけど。アンプの持ち込みを許される状況であれば持っていく。自分が持っているものの方がストレスないからね。もちろん、ライヴハウスにお気に入りのものがあれば、それを使う。
今は持ち込みのアンプヘッドはフェンダーのベースマン。がつんと低音が出る。自分のひとつの特色だからね。あとは…50Wのアンプの方がくすんだ丸い音が出る。好きなんだ。100Wより50Wの方がフィーリングがあうんだよね。

アンプを持ち込める環境なのは、ありがたいよね。
wearerは、僕(YK)のアンプも志歩くんがメンテナンスしてくれているからね。

Y:でも結局、そのひとの頭の中で鳴っている音が一番大事なんだよね。機材にはこだわるけど、そっちのほうが大事。俺がげーしー君と同じ機材使ったからと言って、同じ音はでないからね。

やっぱり2人はサウンドに関して人一倍こだわりがあるんだね。そんな2人から見て、自身のバンドが擁しているソング・ライター(FURAGO:soosu / wearer:YK)についてはどう?

N:うーん、なんだろうな…今までにないタイプだっていうのは思うよね。まず発想が普通じゃないので(笑)。曲を持ってくる時、ただ持ってくるだけじゃなくて、コンセプトまでくっつけて持ってくるんだよね。「この曲はフジロックでやってるイメージで」とか、具体的なヴィジョンがある。最近はより具体的に(他のアーティストの)既存の曲を挙げて、マッシュ・アップ / カット・アップしたり、そこから新しいものをつくってFURAGOにしていくっていう手法をとっていて。そういうところはコンポーザーとしてすごいなって思う。
Y:「選ばれた人」なんだなと思うよ、YKは。「いい曲」っていうは誰にでも作れると思うんだけど…「変な曲」を書くんだよね。「ひっかかる曲」というか。そういう曲を書くことができるのはごく限られた人だと思うんだよね。ジャンルで括れちゃうような「いい曲」を書くバンドはたくさんいるけれど、YKの曲はちょっとはみだしてるというか。

2人はほんとに縁の下の力持ちって感じだよね。実力にたいして謙虚っていうか。そんな2人にも、ギター・ヒーローってあるんでしょ?

Y:あるよ。ジミ・ヘンドリックス。
N:ああー。
Y:それも最近だけどね(笑)。25過ぎくらいから。それまではなんかだるくて退屈なイメージしかなかった。
N:僕はミーハーな子だったので、もともとギターを始めたきっかけは、B'zとかビジュアル系とかだったんだよね。…でも今のギターヒーローは、スタジオ・ミュージシャンの佐橋佳幸(ギタリスト / 作曲家。坂本龍一、桑田圭祐、佐野元春など、多くのミュージシャンとの仕事で知られる。小倉博和とのユニット「山弦」でも活動中)とか。ギターのスタイル的にもすごい影響受けてる。
Y:勝手な印象なんだけど、初めて見た時から、げーしー君はジョン・フルシアンテが好きなんじゃないかなって。
N:いや、ジョン・フルシアンテは全然通ってないよ。
Y:そうなんだ?
N:ロック系のギタリストはまったく通ってない。最近の嗜好では、スタジオ・ミュージシャンと…あとは、やっぱり…そう、ジョージ・ハリスンが一番かな。

すごいの出てきた!(笑)

N:いや、ほんとすごいんだよ、ジョージ・ハリスンは。

今すごい納得する回答が出てきたなあ。でも、言われてみれば、ふたりともジョージ・ハリスンだよね。わがままなソング・ライターたちを影で支えるっていう。

N:FURAGOではまったく出してないんだけど、僕スライド・ギター大好きなんですよ(笑)。
Y:今度スライド・ギター教えてくださいよ(笑)。

(笑)。そろそろ時間だけれど、何か言っておきたいことはある?



Y:探求心がある人はいつ見ても新しくなってるし、見てても楽しい。お互いがそういう存在であればいいな。さっき「好きなギタリストはジミヘン」とかって言ったけど、実際は身近な環境で一生懸命やってる人にこそダイレクトに影響受けるよね。「GET LOUD」(2011年公開の映画。ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、ジャック・ホワイト。3人のギタリストについてのドキュメンタリー。3人の対談やセッションも収録されている。)みたいに、こういう感じでギタリスト・ミーティングしてさ。今はそういう意味では恵まれてて。周りにいいギタリストがたくさんいるから。

なるほどね。

Y:ライヴハウスに入ってきた人がぱっとバンドを見て「いい感じ」だなって思うきっかけって、やっぱりギターの音じゃないかなって思うんだよね。それは俺がギ タリストだからそう感じるのかも知れないけど。だから自分のギターの音には、責任やプライドを持ってやってる。

じゃあ最後に…2人にとってギターとはなんですか?

N:ギターとは「手の延長」ですよね。

「手の延長」?

N:そう。生活している、息をしているのと同じくらいのレヴェルで、ないとだめなもの。

そうかあ。げーしー君らしいなあ。志歩くんは?

Y:ギターとは「自分の声」ですね。

それ考えてたでしょ(笑)

Y:考えてねえよ(笑)「GET LOUD」でジミー・ペイジおじさんがそう言っててさ。間違いないよ(笑)

そりゃ間違いないわ(笑)


(インタビュー、文責:YK)


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